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ゆうれい
幽霊
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,972 字 · 24 页
平田氏もその一人だったので、それを送って来たものに相違ない。
平田氏はそんなものに大して興味もなかったけれど、ちょうど書きものに疲れて一服したい時だったので、すぐ包紙を破って写真を取出して見た。彼は一寸の間それを眺めていたが、ふと何か汚いものにでも触った時の様に、ポイと机の上に抛り出した。そして不安らしい目附で、部屋の中をキョロキョロと見廻すのであった。
暫くすると、彼の手がおじおじと、今抛り出したばかりの写真の方へ伸びて行った。併し広げて一寸見ると、又ポイと抛り出すのだ。二度三度この不思議な動作を繰返したあとで、彼はやっと気を落ちつけて写真を熟視することが出来た。
それは決して幻影ではなかった。目をこすって見たり、写真の表を撫でて見たりしても、そこにある恐しい影は消去りはしなかった。ゾーッと彼の背中を冷いものが這い上った。彼はいきなりその写真をずたずたに引裂いてストーブの中に投込むと、フラフラと立上って、書斎から逃げ出した。
とうとう恐れていたものがやって来たのだ。辻堂の執念深い怨霊が、その姿を現しはじめたのだ。
そこには、七人の発起人の明瞭な姿の奥に、朦朧として、殆ど写真の表面一杯に拡って、辻堂の無気味な顔が大きく大きく写っていたではないか。