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ゆうれい
幽霊
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,972 字 · 24 页
そして、そのもやの様な顔の中に、真暗な二つの目が平田氏の方を恨めしげに睨んでいたではないか。
平田氏は余りの恐しさに、丁度物におびえた子供の様に、頭から蒲団をひっ被って、その晩はよっぴてブルブルと震えていたが、翌朝になると、太陽の力は偉いものだ。彼は少しばかり元気づいたのである。
「そんな馬鹿なことがあろう筈はない。昨夜は俺の目がどうかしていたのだ」
強いてそう考えるようにして、彼は朝日のカンカン照込んでいる書斎へ這入って入った。見ると残念なことには、写真は焼けてしまって跡形もなくなっていたけれど、それが夢でなかった証拠には、写真の包紙が机の上にチャンと残っていた。
よく考えて見ると、どちらにしても恐しいことだった。若しあの写真にほんとうに辻堂の顔が写っていたのだったら、それはもう、例の脅迫状もあることだし、こんな無気味な話はない。世の中には理外の理というものがないとも限らないのだ。それとも又、実は何でもない写真が、平田氏の目に丈けあんな風に見えたのだとしても、それではいよいよ辻堂の呪にかかって、気が変になり始めたのではないかと、一層恐しく感ぜられるのだ。