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ゆうれい
幽霊
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,972 字 · 24 页
二三日の間というもの、平田氏は外のことは何も思わないで、ただあの写真のことばかり考えていた。
若しや、どうかして同じ写真屋で辻堂が写真をとったことがあって、その種板と今度の写真の種板とが二重に焼付けられたとでもいうことではないか知ら、そんな馬鹿馬鹿しいことまで考えて、態々写真屋へ使をやって調べさせたが、無論その様な手落のあろう筈もなく、それに、写真屋の台帳には辻堂という名前は一人もないことも分った。
それから一週間ばかり後のことである。関係している会社の支配人から電話だというので、平田氏が何心なく卓上電話の受話器を耳にあてると、そこから変な笑声が聞えて来た。
「ウフフフフ……」
遠い所の様でもあり、そうかと思うと、すぐ耳のそばで非常な大きな声で笑っている様にも思われた。こちらからいくら声をかけても、先方は笑っている丈けだった。
「モシモシ、君は××君ではないのかね」
平田氏が癇癪を起してこう怒鳴りつけると、その声は段々小さくなって、ウ、ウ、ウ……と、すうっと遠くの方へ消えて行った。そして、「ナンバン、ナンバン、ナンバン」という交換手の甲高い声がそれに代った。