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ひろばのベンチ

広場のベンチ

豊島 与志雄

「文芸」1951(昭和26)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,998 字 · 15 页

青空文庫

石の鳥居がある。そこから一段低くなってる広地は、縁日などにいろんな催し物が行われる場所だが、ふだんは、木影深くひっそりとしている。その外れに、また石の鳥居があって、そこから急な石段となる。二十段ばかり降りると、ちょっと平地となり、下にまた二十段ばかり続く。

上部の石段を降りて、平地で息をつき、それから下部の石段を降りかかった時、十内は息をのんだ。下方の空間に、ぽっかりと、あの少女の顔が浮き出していたのである。

もっとも、それが最初ではなかったようだ。夢ともうつつともなく、前にも一度見たことがある。夜明け頃、まだ眠ったまま、なにか考えごとをしている気持ちだったが、心の眼には、仄白い丸いものが映っていた。それが静止してるとも廻転してるともつかず、ただ明暗の差だけがちらちらしているうちに、額から、眼、鼻、口と、次第に形をととのえて、少女の顔となった。はっと、眼をさますと、室内にまで漂い込んでる薄明るみに、蚊帳が白々と垂れていた。

石段の下方の空間に現われたのは、もっとはっきりした顔だった。

長い髪の毛は垂らしているらしく、前髪だけをお河童風に短く切り揃えて、白い額の上部に影を置いている。