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ひろば

広場

宮本 百合子

「文芸」1940(昭和15)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,809 字 · 31 页

青空文庫

誇張の消えた事務的な調子で、素子は本を詰めて送るための木箱を催促に自分で行ったりしている。

その晩二人は劇場にいた。いつも満員の劇場だが、今夜は或る青年劇団の特別出演で、二階のバルコニーの段々へまで見物人がつまっている。天井から平土間まで、溢れる若々しい活気をやっと抑えているような何とも云えないざわめきが満ちていて、幕があがると舞台の上の若さと見物席の若さとが両方から無邪気にかけよって一つ世界にはまりこむような熱中が感じられるのであった。大体が芝居と音楽好きなこの国の連中のことだとは云え、その夜は全く特別の光景であった。年寄連中の気分もひとりでに釣りこまれて、陽気に頬を火照らしながら、手のひらに持ったリンゴを時々かじりながらあちらこちら見廻している。

朝子は、平土間の中頃に余程前から心がけて買っておいた席があった。初めちょっとした青年生活を諷刺した笑劇で、爆笑哄笑のうちに終ると、バルコニーの席にいる若い見物人たちが、その芝居のなかで歌われた短い快活な唄を忽ち覚えて合唱しはじめた。こまかい節まわしのところはうまく行かなくて笑声混りにごちゃつきながら、終りの