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かんとんねぎ
広東葱
国枝 史郎
「講談雑誌」1921(大正10)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,425 字 · 15 页
「広東葱を食わせるからね」茶化すように自分はこう云った。
自分達が戸を開けて這入って行くと、ボーイが支那流に笑い乍ら、ペコペコ二三度頭を下げた。
「例のボーイがいないじゃ無いか」新井君は室を見廻わし乍ら不平相にブツブツ呟いた。
美少年のボーイはいなかった。
私達は随分皿を代えた。
「オヤオヤ美少年が出て来たよ」
実際新井君が云う通り料理場の口からそのボーイが水煙草を吸い乍ら出て来たが、自分達には目もくれず正面の壁へ寄りかかった。そうして誰かを待っているように戸口ばかりに眼をやった。
戸口が開いてドヤドヤと留学生達が這入って来た。例のボーイはさも嬉しそうに、彼等の群へ飛んで行き、その中でも特に人目に付く、立派の顔立の留学生と忙わしそうに燥焦いで喋舌り出した。
「素敵な指環を穿めているな」新井君が頤で指差すので、その留学生の手を見ると、左の薬指にダイヤ入りの素晴しい、指環を穿めていた。
「千円以上のものだね」自分は窃っと囁いた。
「あの光沢を見るがいい。三千円以上の科物だ」新井君も窃っと囁いた。
外へ出てからも新井君は何か熱心に考えていたが、
「どうも変だよ」と呟いた。