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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

受朋友之托调查一个神秘女子的过去,却一步步走进她背后复杂的情感世界,真相远比你想象的更耐人寻味。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,333 字 · 385 页

青空文庫

三

森本はこんな話をしながら、紙屋へ這入って巻紙と状袋で膨らました懐をちょっと抑えながら出て来た。表に待っていた敬太郎はすぐ今来た道の方へ足を向け直した。二人はそのままいっしょに下宿へ帰った。上靴の踵を鳴らして階段を二つ上り切った時、敬太郎は自分の部屋の障子を手早く開けて、

「さあどうぞ」と森本を誘った。森本は、

「もう直午飯でしょう」と云ったが、躊躇すると思いの外、あたかも自分の部屋へでも這入るような無雑作な態度で、敬太郎の後に跟いて来た。そうして、

「あなたの室から見た景色はいつ見ても好いね」と自分で窓の障子を開けながら、手摺付の縁板の上へ濡手拭を置いた。

三

敬太郎はこの瘠せながら大した病気にも罹らないで、毎日新橋の停車場へ行く男について、平生から一種の好奇心を有っていた。彼はもう三十以上である。それでいまだに一人で下宿住居をして停車場へ通勤している。しかし停車場で何の係りをして、どんな事務を取扱っているのか、ついぞ当人に聞いた事もなければ、また向うから話した試もないので、敬太郎には一切がXである。たまたま人を送って停車場へ行く場合もあるが、そんな時にはつい混雑に取り紛れて、停車場と森本とをいっしょに考えるほどの余裕も出ず、そうかと云って、森本の方から自己の存在を思い起させるように、敬太郎の眼につくべき所へ