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せいふくのじじつ

征服の事実

大杉 栄

「近代思想 6月号」1913(大正2)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,074 字 · 9 页

青空文庫

そして他の種族は被征服者の地位に落ちる。

この征服によって、まったく異なった二種族が密接な接触をすることとなる。しかし彼等はとうてい同化することができない。いわばその社会は両極に分れるのである。征服者は常に被征服者を蔑視する。あらゆる方法をもって奴隷化する。被征服者はまた、仕方なしに服従しながらも、征服者の暴力以外のいっさいのものを認めない。かくして互いに敵視し反感する二種族が、社会の両極を形づくることとなる。

けれどもこの二種族の不平等は、地位の不平等ということ以上に、なおあるものがあったのである。もともとこの二種族は先きにも言ったごとく、まったく異なれる種族である。彼等は異なれる言語を使っている。異なれる神を崇拝している。異なれる様式と礼拝とを行っている。異なれる風俗と習慣と制度とを持っている。そして被征服種族は、それらのものの一つでも失うよりは、むしろ退治し尽されることを望んでいる。征服種族はその臣下の有するあらゆるものに対して、絶対的軽侮をほしいままにしている。しかしそれを自らのものに同化することはできない。

ここにおいて、この両極の調和、というよりはむしろ、征服者が本当に被征服者を征服しおわせんがために、社会の諸種の制度が生れた。