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せいふくのじじつ

征服の事実

大杉 栄

「近代思想 6月号」1913(大正2)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,074 字 · 9 页

青空文庫

樗牛全集の中に、ブランデスの何かの本から抜いた、次の文がある。

「少なくともヨーロッパの四大国民の名は、いずれもみな外国の名である。フランスの名称は、ライン河の西岸に棲んでいたフランク人から来たもので、この国民の祖先たる古のケルト人とは、何の因縁もないのである。イギリスの名は、もとドイツの一地方から来たもので、アングロサクソン民族とは、何の血族上の連絡もないのである。ロシアの名は、もと北方の起原で、スカンジナビアの一民族たる、ロゼルの転訛したものである。プロシャはプロイセンというスラブの一蛮族の名で、十二世紀の終り頃に、ドイツにはいったのである。」

この事実は、僕が今ここに述べようとすることと、あるいは関係のあるものもあり、あるいはさほどに関係のないのもあるかも知れぬ。けれども、これを読んだ時の僕自身に取っては、これが深い社会事実を思わせる、力強い暗示であったのである。

征服だ! 僕はこう叫んだ。社会は、少なくとも今日の人の言う社会は、征服に始まったのである。

カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスとは、その共著『共産党宣言』の初めに言っている。