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おうまじるしはいしゃく
御馬印拝借
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1944(昭和19)年2月号
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 21,483 字 · 43 页
口べたで、……今日こそと思いながら、つい切りだす折を得ないで来た。それなら仲人をたのめばよいわけだけれど、勘兵衛はどうしてもじかに話をきめたかった、「貰ってくれるか」「頂きましょう」そういうはっきりした約束を自分でとり交わしたかったのである。……相対して坐ったままかなりほど経てから、「じつはこのたび出陣いたします」と源七郎がようやく口を切った、「……先手組の番がしらに取立てられまして、こんにちこれより掛川城までくだります」「ほう、先手の番がしらか……」勘兵衛は眼をみはった、榊原の先手組はその精鋭とはげしい戦闘力をもって知られている、その隊長に選まれたというのはひじょうな抜擢であり名誉であった、「それはめでたいな、しかもすぐ出陣とは、……ではいよいよ甲州と始めるのだな」「いかがでございましょうか、わたくし如きにはなにも相わかりませんが、当分は掛川に駐まるものと存じますので、ご挨拶を申しにまかり出ました」「それはよう来てくれた、それではともかく祝儀のしたくを致そう」勘兵衛はそう云って立ちかけた、しかし立ちかけた膝を元へ直すと、急に意を決したというようすで「……はなはだ突然ではあるが、そこもとが出陣するに当って、いや、その出陣するというについて話がある