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おたか

御鷹

吉川 英治

「オール讀物」文藝春秋、1936(昭和11)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,767 字 · 18 页

青空文庫

一

一

眼がしぶい、冬日の障子越しに、鵙の声はもう午近く思われる。

弁馬は、寝床の上に、腹ばいになり、まだ一皮寝不足の膜を被っている頭脳を、頬杖に乗せて、生欠伸をした。

顔中のあばたが動く。

煙管を取って、すぱっと一ぷく燻らしながら、ゆうべ打粉を与えて措いた枕元の腰の刀を見ると、さすがに体が緊まって来た。

『――あいつも、寝られなかったに違いない』

弁馬はこう自嘲すると共に、すぐ明け方の夢の中から、お悦の眸と、角三郎の顔だけを脳膜にぼんやり映し出していた。

その後頭部と瞼のうえに、鈍いしびれを感じると、弁馬は拳を当てて、

『こんな事では――』

がばと、筋肉へ張を入れて、刎ね起きた。

裏へ出て、井戸で含嗽をしていると、

『若旦那、奥で、皆様がお眼ざめを待ちかねて居らっしゃいますよ』

と、下婢がいう。

庭の隅で、落葉を焚いている仲間の爺やが、憂わしげに、煙の中から振向いていた。

『皆様とは、誰が?』

『弓町の伯父様』

『それから』

『駒込のお従弟様、まだ他にも、御親類の方がおそろいで』

『何しに来たんだ。親類が首を揃えるような事はないじゃないか』

『御飯を、どうぞ』

『飯。