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こころにうずくよっきゅうがある
心に疼く欲求がある
宮本 百合子
「中央公論」文芸特集号第四号、1950(昭和25)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,908 字 · 24 页
わたしの心理に近代的コンプレックスが見られないということが、あき足りなさとしてしばしば云われる。或いはいくらか嘲弄的にもふれられる。ある読者からフロイドをどう考えるか、という質問もあった。
わたしの生活と文学との通って来た特別な道行きをさかのぼってみると、わたしは、常にコンプレックスを解く方向へ努力しつづけて来た人間であった。互に押しへだてられて生活した十二年間に、夫と妻であるわたしたちは、当時の不自然きわまる個人的・社会的条件――コンプレックスそのものである日々の中で、あらゆる機会と表現をとらえて可能なかぎり互のコンプレックスを解放する努力をつづけて来た。ひずんでしまわないために、偏執にひからびないために。
そういう事情があったばかりでなく、わたしは、コンプレックスを解こうとしずにいられないたちかもしれない。日本の社会は、どっちを向いても、あんまりコンプレックスが多すぎる。こんにちでは、昔ながらの日本のコンプレックスが解かれきっていない上に舶来のファクターが重って来て、日本の知性、良心のコンプレックスは実に圧の高いものになった。
第一次大戦から第二次大戦までの文学に、フロイドが与えた影響は非常に広汎であったと思う。