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こころのアンテナ

心のアンテナ

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,973 字 · 27 页

青空文庫

三羽烏三つ巴

「…………」

「銀さん、私、駈引のないところ、そんなお婆さんに見えますの?」

「いや、何う致しまして」

「それなら人が真面目なお話をしているのに、笑わなくても宜いでしょう?」

「相済みません」

「此奴は馬鹿だよ」

と師匠も銀二郎君を睨んでいた。

「余り利巧じゃないようね」

「頭の毛が三本足りないんだ」

「お猿?」

「モンキーのインテリさ」

「銀さん、あなた本当にもっとしっかりして下さらないと困りますよ」

「気をつけます」

と銀二郎君はあやまるばかりだった。そればかりでない。奥さんは師匠の立った後、

「銀さん、あなたは今何と仰有いました?」

「さあ」

「決してと仰有いましたよ。決して私の肩を持ちませんって」

「…………」

「ハッキリしていらっしゃいますのね」

三羽烏三つ巴

銀太夫君は師匠から芸を習うと共に、師匠のインテリ啓発に努めた。鐘師匠は我儘な人だけれど、気心は極く好い。腹を立てゝも、長くこだわらない。奥さんも同じことだった。言う丈け言ってしまえば、後はカラッとする。銀二郎君は二人の主人に仕えるのみならず、美代子さんの御機嫌にも叶って、四五年間無事に勤めた。芸の方も熱心に励んで、相応に上達した。