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こころのアンテナ

心のアンテナ

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,973 字 · 27 页

青空文庫

「僕、駄目だと思うんです」

「気が弱いのね、銀さんは」

銀、鐙、錺の三青年は芸道の造詣丁度伯仲の間にあったから、間もなく鐘太夫門下の三羽烏と呼ばれるようになった。銀さんに向って対等意識を持ち始めた鐙君と錺君は当然同一の問題を考えた。それは三人が対等なら、誰かその中の一人が師匠の名跡を継いで、美代子さんを貰うということだった。鐙君と錺君は本能的に自己を主張した。その第一は兄弟子の陰口をきくことだった。第二はお互に争うことだった。二人は時々口論をして足らず、或は撲り合いをやった。物音を聞きつけて銀さんが駈けつけたら、鐙君と錺君が睨み合っていた。

「何うしたんですか?」

と銀さんが訊いたが、二人は答えなかった。実は自分達にも何の為めの喧嘩か分らない。要するに相容れない為めに相容れないのである。

その中に三人はお互に敵だということを確実に承知した。浅ましいけれど、仕方がない。同じ部屋に寝起きをしていながら、好かれとは願わず、何うか彼奴が失策るようにと思う。ついては決して推薦しない。その反対を心掛ける。斯ういう険しい形勢の折から、銀太夫君は或日、師匠から稽古を受けている最中、首を振る度に髪の毛が目の辺まで垂れ下るのを気にして、再三トチった。