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こころのしらべ

心の調べ

宮城 道雄

宮城道雄『心の調べ』。同一底本的分册已合并为一书。收入:心の調べ、雨夜の駅、音の世界に生きる、垣隣り、声と食物、声と性格、声と人柄、五十年をかえりみて、純粋の声、春雨、耳の日記、昔の盲人と外国の盲人、山の声、私のすきな人、私の若い頃、レコード夜話。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,958 字 · 66 页

青空文庫

師匠が手を取って、最初に教えられたのは「四季の花」であったが、その唄い出しの“春は花”という節の箏の音色に、私は幼いながらも、何か美しいものを感じた。

箏を習いはじめると、昨日よりは、今日、今日よりは明日と言うように、何か希望がわいて、眼のことなど忘れて心が明るくなって来た。しかし、眼の方は何時の間にか明りも見えなくなっていた。

師匠はきびしく、盲人は記憶力が肝腎である、一度習ったことを忘れたら、二度とは教えてやらないと常に言われた。

ところが、私が三味線の本手の「青柳」と言う曲を忘れた時、ひどく叱られて忘れたのを思い出す迄は、御飯も食べさせない、家へも帰らせないと、留めおきをくった。ところが不思議なことに、お腹がすいてくると頭がさえて、忘れたのもつい想い出すのである。

また寒稽古といって、寒中に戸障子を明け放して、寒い方へ向って習った中の一番むずかしいものを、百篇とか、千篇とか繰返して弾く。そして手が冷たくなると、反対に水をつけてまた弾きだす。しまいには指から血が出るようなこともあった。

師匠がきびしかったおかげで、私は十三歳の年に、師匠の免状を許された。