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しんりしけん

心理試験

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,728 字 · 46 页

青空文庫

蕗屋は如何にも今思出した風を装って云った。

「あれは六歌仙の絵でしたね。小野の小町も覚えてますよ。併し、もしその時傷がついていたとすれば、見落した筈がありません。だって、極彩色の小町の顔に傷があれば、一目で分りますからね」

「じゃ御迷惑でも、証言をして頂く訳には行きませんかしら、屏風の持主というのが、実に慾の深い奴で始末にいけないのですよ」

「エエ、よござんすとも、いつでも御都合のいい時に」

蕗屋はいささか得意になって、弁護士と信ずる男の頼みを承諾した。

「ありがとう」明智はモジャモジャに延ばした頭を指でかき廻しながら、嬉し相に云った。これは、彼が多少亢奮した際にやる一種の癖なのだ。「実は、僕は最初から、あなたが屏風のことを知って居られるに相違ないと思ったのですよ。というのはね、この昨日の心理試験の記録の中で『絵』という問に対して、あなたは『屏風』という特別の答え方をしていますね。これですよ。下宿屋にはあんまり屏風なんて備えてありませんし、あなたは斎藤の外には別段親しいお友達もない様ですから、これはさしずめ老婆の座敷の屏風が、何かの理由で特別に深い印象になって残っていたのだろうと想像したのですよ」