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しんりしけん
心理試験
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,728 字 · 46 页
「併し、あなたはなぜ、『金』だとか『人殺し』だとか『隠す』だとか、嫌疑を受け易い言葉を選んで答えたのでしょう。云うまでもない。そこがそれ、あなたの無邪気な所ですよ。若しあなたが犯人だったら、決して『油紙』と問われて『隠す』などとは答えませんからね。そんな危険な言葉を平気で答え得るのは何等やましい所のない証拠ですよ。ね、そうでしょう。僕のいう通りでしょう」
蕗屋は話手の目をじっと見詰めていた。どういう訳か、そらすことが出来ないのだ。そして、鼻から口の辺にかけて筋肉が硬直して、笑うことも、泣くことも、驚くことも、一切の表情が不可能になった様な気がした。
無論口は利けなかった。もし無理に口を利こうとすれば、それは直ちに恐怖の叫声になったに相違ない。
「この無邪気なこと、つまり小細工を弄しないということが、あなたの著しい特徴ですよ。僕はそれを知ったものだから、あの様な質問をしたのです。エ、お分りになりませんか。例の屏風のことです。僕は、あなたが無論無邪気にありのままにお答え下さることを信じて疑わなかったのですよ。実際その通りでしたがね。ところで、笠森さんに伺いますが、問題の六歌仙の屏風は、いつあの老婆の家に持込まれたのですかしら」