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しんれいさつじんじけん
心霊殺人事件
「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页
私のいる位置などあの方にはタナゴコロをさすようでして、次にどこ、次にはどこへということまで暗闇の中でちゃんとお判りでしたろう。その他の方々には無理でしょうな。へえ、当日、後閑さんと最も多く話を交したのは私だったかも知れませんが、みんな心霊術に関することばかりでして、あの方の身に危険が迫っているようなこと、むろん一言も仰有る道理がありません。なんしろ初対面でしてな。
辰男の証言
――年齢は
――三十一年五ヶ月です
――お前は父を憎んでいたそうだな
――大ざっぱに分類すれば、好きな父ではありませんが、憎むといっては言いすぎじゃアありませんか
――何億の財産がころがりこんで、うれしいだろうな
――それは悪い気持じゃありませんよ
――素直に白状してしまえ。みんな判っているのだ
――何が判ってるんです。ぼくが殺したと仰有るのですか。証拠があったら見せて下さい
――いまに見せてやる。時にお前はどっちを廻って行ったのだ。糸子のうしろの方だな
――ぼくは動きませんよ
――ミドリはお前が立ち去る気配に気づいたと言っておるよ
――冗談でしょう
――糸子も同じように証言をしている。