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しんれいさつじんじけん

心霊殺人事件

坂口 安吾

「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页

青空文庫

というようなわけ。

まず見物人が着席する。現場は死体がないだけで、そっくり以前のままである。吉田八十松はこれまた哀れで、仙七とどこでどうして何を喋ってどこを通ってと相手がいないのに相手のぶんまでやらされて、ようやく実演室へたどりつく。つづいて糸子がアタフタかけこんできて、

「間に合ったア! バカバカしい!」

ヤケを起して、ころげまわっている。いずれも先日同様のもしくは類似の服装であるが、茂手木と岸井は洋服に靴下、吉田八十松も洋服に靴下ばきで九太夫と辰男が足袋である。女もむろん足袋か靴下で、素足の者は一人もいない。

警官が代って吉田八十松をイスにしばりつけ、いよいよ実演の段取りとなったが、今度は八十松が怒ってしまった。警官たちを睨みまわして、

「あなた方、どうしてそこいらに立ってなさるんです。それじゃア実演ができません。とっとと引きとっていただきたいね」

「警官が立ち合わなくちゃア実演の意味をなさんのでな」

「そんなにたくさんアチコチにいちゃア邪魔で仕様がない」

「この警官たちが皆さんの代りに被害者の方へ歩いたり、その気配をききとめたりする役目なのだから仕方がないよ」