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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

武士だけが一人立っている。じっとうなだれて考えている。肩の辺に月光がさしている。

と女の呼ぶ声がした。

「今夜はお遁がしいたしません」

「うむ、お前か、うむ、島子か」

「はい」

と女が現われた。中年者らしい女である。

廻廊を伝って寄って来た。

「はっきりご返辞してくださいまし」

四

ここに一人の武士があった。

微禄ではあったが直参であった。といったところでたかが御家人、しかし剣道は随分たっしゃで、度胸もあれば年も若かった。悪の分子もちょっとあり、侠気もあってゴロン棒肌でもあった。名は結城旗二郎、欠点といえば美男ということで、これで時々失敗をした。

「アレーッ……どなたか! ……助けてくださいよーッ」女の悲鳴が聞こえて来た。

お誂え通りわるが出て、若い女をいじめているらしい。

「よし、しめた、儲かるかもしれない」

で、旗二郎駈け付けた。

案の定というやつである、ならずものらしい三人の男が、一人の娘を取りまいていた。

「これ」といったが旗二郎、「てんごうはよせ、とんでもない奴らだ!」

「何を!」

と三人向かって来た。

「何をではない、てんごうは止めろ」