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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页
豊かな垂れ頬、ひきしまった頤、厚い耳たぶ、長目の首、総体が華奢で上品で、そうして何んとなく学者らしい。体格は中肉中身長である。顔に負けない品位がある。着流しの黒紋付き、それで端然と坐っている様子は、安く踏んでも大旗本である。品位と貫禄と有福と、智恵と人情とを円満に備えた、立派な武士ということが出来る。
だが一つだけ不思議なのは、そのいうことやいう態度に、おちつきのないことであった。どことなく何んとなくオドオドしている。何物をか恐れているようである。いっている言葉にも矛盾がある。そうしていわないでもよいようなことまで、いっているようなところがある。といってもそれが悪い心から、発しているものとは思われない。で、もちろん、加工的でもない。自然とそんなようになるのらしい。だからいよいよ変なのである。
何かに脅えているのらしい。何かに縋ろうとしているのらしい。助けられたがっているのらしい。――つまりそんなように見えるのであった。
「どうも不思議な人物だな。……変なところへ入り込んでしまった」
結城旗二郎は気味悪くなった。
「俺の意志など勘定にも入れず、勝手に決めてしまうのだからな。