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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

六

通された部屋は寝所であった。

豪勢な夜具がしいてあった。

一通りの物が揃っていた。というのは結構な酒肴が、タラリと並べられてあるのであった。蒔絵の杯盤、蒔絵の銚子、九谷の盃、九谷の小皿、九谷の小鉢、九谷の大皿、それへ盛られた馳走なども、凝りに凝ったものである。金屏風が一双立て廻してある。それに描かれた孔雀の絵は、どうやら応挙の筆らしい。朱塗りの行燈が置いてある。その燈火に映じて金屏風が、眼を射るばかりに輝いている。片寄せて茶道具が置いてあり、茶釜がシンシン音立てている。

茶も飲めれば酒も飲める。寝たければ勝手に寝るがよい、寝ながら飲もうと随意である――といったように万事万端、自由に出来ているのであった。

が、一つだけ不足のものがあった。

酌をしてくれるものがないことである。

上蒲団を刎ねた旗二郎、見ている者もないところから、敷蒲団の上へあぐらを組み、手酌でグイグイ飲み出したが、考え込まざるを得なかった。

「どう考えたって変な屋敷だ、どう思ったって変な連中だ、からきし俺には見当がつかない。……それにさ、さっきの主人の言葉に、妙に気になる節があった」