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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页
というのは他でもない、「二十歳と二十三歳、ちょうど頃加減でございますからな」こういった主人の言葉である。
「これでは、まるでこの家の娘――そうそう葉末とかいったようだが、それと、この俺とを一緒にして、婚礼させようとしているように聞こえる。そういえば、さっき俺の身分を、それとなく尋ねたようでもあった。いよいよ合点がいかないなあ」
グイグイ手酌で飲んで行く。
だが酔いは少しも廻ろうともしない。心気がさえるばかりである。
「家の構え、諸道具や諸調度、これから推してもこの家は、大変もない財産家らしい。いや主人もそういった筈だ、人もうらやむほどの財産家だと。……その上娘はあの通り綺麗だ。婿にでもなれたら幸福者さ」
グイグイ手酌で飲んで行く。
葉末という娘の風采が、ボッと眼の前へ浮かんで来た。月の光で見たのだから、門前ではハッキリ判らなかったが、燈火の明るい家の中へはいり、旗二郎を父親へひきあわせ、スルリと奥へひっ込んだまでに、見て取った彼女の顔形は、全く美しいものであった。キッパリとした富士額、生え際の濃さは珍らしいほどで、鬘を冠っているのかもしれない、そんなように思われたほどである。