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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

来やがれ! 誰でも! 叩っ切る!」

で、スルスルと足音を忍ばせ、先へ進むと木立があり、それを抜けた時行く手にあたり、取り廻した厳重の土塀が見え、ガッシリとした裏門が、その一所に立っていた。

「うむ、あいつが裏門だな」

小走ろうとした時、トン、トン、トン、と、その裏門を外の方から、忍びやかに叩く音がした。

と、一つの人影が、母屋の方から現われた。意外にも女の姿である。裏門の方へ小走って行く。で、旗二郎地へひれ伏し、じっと様子をうかがったが、またも意外の光景を見た。

八

というのは他でもない、小走って来たその女と、門外にいるらしい男との間に、こんな話が交わされたのである。

「首尾はどうだ?」と男の声がした。

「今夜十二時……」と女の声が答えた。

「ハッキリした返辞をするそうだよ」

「ナニ十二時?」と怒ったように、「それでは少し遅いではないか」

「遅くはないよ」と女の声も、何んとなく怒っているようである。「十二時キッチリにまとまったら、何んのちっとも遅いものか」ぞんざいな伝法な口調である。

「が、一分でも遅れては駄目だ」不安そうな男の声である。

「九仭の功を一簣に欠くよ」