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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

で、旗二郎微動もせず、なおも様子を窺った。

「とにかく」と男の声がした。門の外にいる男の声だ。「是が非でも成功させるがいい」

「お前さんもさ」といい返した。門内の女がいい返したのである。「万全の策をとるがいいよ」

「いうまでもないよ」と笑止らしく、「武士を入れるよ、切り込みのな。……備えはどうだ、屋敷内の備えは?」

「宵の間に一人若い武士が、屋敷へはいって泊まり込んでいるよ」

「え?」といったが驚いたらしい。「どんな人品だ? 立派かな?」

「ああ人品は立派だが、御家人らしいよ。安御家人らしい」

「ふうん」といったまま黙ってしまった。

門内の女も黙っている。で、森閑と静かである。ピシッ、ピシッと音がする。泉水で鯉が跳ねたのらしい。

「俺の噂をしているわい」ニヤリと笑った旗二郎、「立派な人品とは有難いが、安御家人とは正直すぎる」――で、なお様子をうかがった。

と、男の声がした。「どっちみち油断は出来ないの。うかうかしていてその御家人に、玉を取られては一大事だ。……よしよしすぐに手配りをしよう」

「それがいいよ」と女がいった。「それでは私は帰るとしよう」

そこで女は木立をくぐり、母屋の方へ帰ったが、間もなくポッツリと土塀の上へ、一つの人影が現われた。