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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

(わしはあのお方がこれで三人も、人を殺したのを見たのだが、幾人これから殺すのだろう。……でもこれは人事ではない。わしが変心していなかったら、あのお方のようになっていただろう)

そんなように心で思った。

「これで流行の白飛白でも買って、それを着て豊国に描かせておやり」

こう云いながら若干かのお金を、おきたの前へ差し出して、自分の方が嬉しそうに、三十郎が笑ったのは、数日後のことであった。

隅田川に向いている裏座敷の障子が、一枚がところ開いていて、時々白帆の通るのが見えた。

額がすこし高かったが、それがかえって愛嬌になり、眼が眠たげに細かったが、それがかえって情的でもある、難波屋おきたは小判を見ながら、辞儀をしたものの眉をひそめた。

(この人微禄の身分だのに、随分派手にお金を使う)

こう云う不安があったからである。

いつも媾曳をするこの船宿にも、かなりの払いをするようだし、そのほか色々あれやこれや……。

「ねえ」

とおきたは甘えた声の中へ真面目さをこめて男へ云った。

「無理な算段などなされずにねえ」

「大丈夫だよ、大丈夫だよ」

今日も浅草随身門内の、水茶屋難波屋の店に立って、おきたは客あしらいに余念なかった。