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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

わしはあの時あのおきたと、夫婦になればよかったのだ。わしがおきたと夫婦になっていたら、おきたはこんなあばずれ女に、決してなってはいなかっただろう! ……因果応報! 悪因悪果! わしは快く殺されよう!)

そこで彼は大声で叫んだ。

「わたしは快く死にまする! さあさあお斬りくださいまし!」

彼は立ったまま合掌し、眼をつむって静まっていた。

でもいつまで待っていても、刀が彼の身へは触れなかった。

そうして彼が眼をあけた時には、おきたと三十郎との姿は見えず、野面の芒を風がそよがし、月が照っているばかりであった。

このことが絶好の教訓となって、源空は仏道に精進し、そのため次第に位置も進み、やがて一箇寺の住職となり、老年となるや高僧として、諸人に渇仰されるようになったが、そうなってからも疑問だったのは、

(あの時どうして三十郎のために、わしは命を取られなかったのだろう?)

という、そういうことであった。

しかしもし彼が雲水となって、奥州塩釜の里へ行き、なにがしという尼寺を訪ね、法均という尼の口から、身の上話を聞いたなら、疑問は氷解したことと思う。

法均は人へこう話すそうな。