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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页
、地に仆れたことでした。
「重助来い!」
「へい」
「向こうだ!」
木立のあなた遙かの向こうに、ぽっと火の光が射していましたが、その方へわたしたちは走って行きました。
千木のたててある建物が立っていて、その門の戸があいていて、そこから火の光が射していて、その前に十数人の人影がいて、何やら叫んでおります姿が、わたしたちの眼に見えました。
そうしてそれらの人々の背後に、丘のような蘇鉄の植え込みがあり、その蔭へわたしたちは走り込み、彼らの様子をうかがいましたが、屋内の様子に気をとられていたからか、彼らはわたしたちに気づきませんでした。
九
彼らは捕吏の一部でした。さっきかた斗丈庵へ押しよせて来た、その捕吏の一部でした。そうしてその中に例の男――竹田街道の立場茶屋や、この屋敷の門前で逢い、斗丈庵では望東尼様の頭巾を、かなぐりすてましたところの例の男がいて、それが屋内に呼びかけていました。
「お綱、出て来い! ヤイ下りて来い!」
でも屋内からは返辞がなく、森閑としておりました。
「来ないか、来なければ俺が行くぞ!」
またその男は叫びました。
しかし依然として屋内からは、何んの返辞もないらしく、森閑としておりました。