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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

「行きな、親分、とり逃がしたら事だ」

「姐ごは心変わりしたんですぜ。……今ではあべこべに敵方で。……ですから親分踏み込んで行って……」

集まっている捕吏の口々から、そういう声々が叫ばれました。

「うむ、そいつは知ってるが、ここは迂濶にはいれない、あらたかなところになっているのだからなあ」

「あらたかもクソもあるものですかい。あっしたちの手入れの先廻りをして、お尋ね者を連れ出して、かくまっている姐ごじゃアありませんか。よしんばそいつが親分の情婦にしたところで……」

「そうともよ、見遁がせねえなあ」

「そいつを愚図愚図しているようなら、目明し文吉の兄弟分、三条の藤兵衛とはいわせませんぜ」

「うるせえヤイ!」と藤兵衛という男は、突然怒り声をひびかせましたっけ。「そうまで手前たちにいわれちゃア。……お綱、いよいよ下りて来ねえか、よーしそれじゃアこっちから行く! ……手前たちここに待っていろ、俺ひとりで踏み込んで行くから」

藤兵衛という男の勢い込んで、門口から屋内へ駆け込んで行く姿が、すぐにわたしたちの眼に映りました。と、その後しばらくの間は、ひっそりとしておりました。