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かいとうおう

怪塔王

海野 十三

「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页

青空文庫

三千メートル、二千八百――

「これは変だなあ。そんな厚ぼったい雲があるだろうか」

兵曹長は、あまりに厚い雲に対して不平をいいながら、愛機を操縦して、なおもぐんぐん下りていきました。

あたりはますます暗くなる一方で、まるで壁の中にぬりこめられたような感じです。いつの間にか飛行服の上を、雨が滝のようにながれています。空中生活になれた兵曹長も、こんな目にあうのははじめてです。普通の人だったら、泣きだしたかもしれません。

兵曹長は操縦桿をにぎりしめたまま、なおもぐんぐん落ちていきました。

九百メートル、七百メートル――

雲はまだ、そこら中に漂っています。

そのうちに、彼は雲をとおして、はるかの下に、くろずんだものを見つけました。

「あっ、見えた。陸地か、海面か」

ごうっと落ちていく機体の前に、下からむくむくともりあがるように上って来たのは、白い波頭をふりたてて怒っている大海原でありました。まるでガラスの棒のような雨は、海面をめちゃくちゃに叩きつけています。

「これはたいへん。ものすごい荒天だ」

飛行機は、水の中を飛んでいるように見えます。視界ははなはだせまい。