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かいとうおう

怪塔王

海野 十三

「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页

青空文庫

「しまった」

兵曹長も、さる者です。砂原の上にたたきつけられるが早いか、すっくと立ちあがりました。そして踵をかえすと、弾丸のように、怪塔王の胸もと目がけてとびつきました。

「なにを!」

「うーむ」

小浜兵曹長と怪塔王とは、たがいに真正面から組みつき、まるで横綱と大関の相撲のようになりました。

小浜兵曹長は力自慢でしたが、怪塔王もたいへんに強いので、油断はなりません。

えいえいともみあっているうちに、兵曹長は得意の投の手をかける隙をみつけました。ここぞとばかり、

「えい!」

と大喝一声、怪塔王の大きい体を砂原の上にどーんとなげだしました。

怪塔王は、俵を転がすように、ごろごろと転がっていましたが、やっと砂原の上に起きなおったところをみると、いつの間にか右手に、妙な形のピストル様のものを持っていました。兵曹長は、はっと立ちすくみました。

2

「さあ、寄ってみろ。撃つぞ」

怪塔王は、砂原の上に、妙な形のピストルを手にして、小浜兵曹長の胸もとを狙っています。

これには、勇敢な兵曹長もちょっとひるみました。怪塔王の手にある妙な形のピストルは、このままではどうしても小浜兵曹長の胸を射ぬきそうです。