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かいむ
怪夢
夢野 久作
「文学時代」1931(昭和6)年10月、「探偵クラブ」1932(昭和7)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,100 字 · 23 页
病院
……今度は金襴の法衣を着た坊さんであった。若い、品のいい宮様のように鼻筋のとおった人形……それが心持ち眼を伏せて、両手を拝み合わせたままスーッと辷って行った。
私はブルブルと身震いをした。あたりは森閑とした街路……大空は星で一パイ……。
……深夜の東京の怪……私がタッタ一人で見た……。
私は、私の周囲に迫りつつある、何とも知れない、気味のわるい、巨大な、恐ろしいものを感じた。一刻も早く家に帰るべくスタスタと歩き出した。
その時に私の前と背後から、二台の自動車が音もなく近付いて来た。
……私と……。
……私の夢の……。
……結婚式当日の姿……。
私は逃げ出した。クラブの玄関へ駈け込んで、マットの上にぶッ倒れた。
「助けてくれ」
病院
私はいつの間にか頑丈な鉄の檻の中に入れられている。白い金巾の患者服を着せられて、ガーゼの帯を捲き付けられて、コンクリートの床のまん中に大の字型に投げ出されている。
……精神病院らしい。
しかし私は驚かなかった。そのまま声も立てずにジット考えた。ここが精神病院だとわかれば、騒いでも無駄だからである。騒げば騒ぐほど非道い目に合う事がわかり切っているからである。