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かいむ

怪夢

夢野 久作

「文学時代」1931(昭和6)年10月、「探偵クラブ」1932(昭和7)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,100 字 · 23 页

青空文庫

七本の海藻

その眼と鼻の間へ、一撃を食らわした。そうして鼻血をポタポタと滴らしながらグッタリとなった身体を、力一パイ向うの方へ突き飛ばすと、深夜の廊下に夥しい音を立てて……ドターン……と長くなった。そのまま、死んだように動かなくなった。

「……ハッハッハッ……ザマを見ろ……アハアハアハアハ」

七本の海藻

曇り空の下に横たわる陰鬱な、鉛色の海の底へ、静かに静かに私は沈んで行く。金貨を積んで沈んだオーラス丸の所在をたしかめよ……という官憲の命令を受けて……。

潜水着の中の気圧が次第次第に高まって、耳の底がイイイ――ンンと鳴り出した。続いて心臓の動悸がゴトンゴトン、ボコンボコンという雑音を含みながら頭蓋骨の内側へ響きはじめる。それにつれて、あたりの静けさが、いよいよ深まって行くような……。

……どこか遠くで、お寺の鐘が鳴るような……。

灰色の海藻の破片がスルスルと上の方へ昇って行く。つづいて、やはり灰色の小さい魚の群が、整然と行列を立てたまま上の方へ消え失せて行く。

眼の前がだんだん暗くなり初める。

……とうとう鼻を抓まれても解らない真の闇になると、そのうちに重たい靴底がフンワリと、海底の泥の上に落付いたようである。