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かいむ
怪夢
夢野 久作
「文学時代」1931(昭和6)年10月、「探偵クラブ」1932(昭和7)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,100 字 · 23 页
て考えたが……間もなく私はハッと気付いた。眼をまん丸く剥き出して、その顔を見上げた。
それは私が予想した通りの顔であった。……青白く痩せこけて……髪毛をクシャクシャに掻き乱して……無精髪を蓬々と生やして……憂鬱な黒い瞳を伏せた……受難のキリストじみた……。
それは私であった……嘗てこの病院の医務局で勉強していた私に相違なかった。
私の胸が一しきりドキドキドキドキと躍り出した。そうして又ドクドクドク……コツコツコツコツと静まって行った。
診察着の背後の巨大な建物の上を流れ漂う銀河が、思い出したようにギラギラと輝いた。
……と……同時に私は、一切の疑問が解決したように思った。私を精神病患者にして、この檻に入れたのは、たしかにこの鉄格子の外に立っている診察着の私であった。この診察着の私は、あまりに自分の脳髄を研究し過ぎた結果、精神に異状を呈して、自分と間違えてこの私を、ここにブチ込んだものに相違なかった。この「診察着の私」さえ居なければ私は、こんなにキチガイ扱いされずとも済む私であったのだ。
そう気が付くと同時に私は思わずカッとなった。吾を忘れて、鉄檻の外の私の顔を睨み付けながら怒鳴った。