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きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

それはどこか日本人ばなれのした異国風の美しさであった。ジュリアという洋風好みの芸名がピッタリと似合う美しさを持っていた。

ジュリアは一郎のために受話器をとりあげて、支配人の許に電話をかけた。だが生憎支配人は、用事があってまだ劇場へ来ていないということだった。

「じゃここでお待ちにならない」

「ええ、待たせていただきましょう。その間に僕はジュリアさんにお土産をさしあげたいと思うんですが――」

といって一郎はジュリアの顔をみた。

「お土産ですって。まア義理固いのネ。――一体なにを下さるの」

「これですけれど――」

一郎はポケットから小さい紙箱をとりだして、ジュリアの前に置いた。

「あら、これは何ですの」

ジュリアは小箱をとって、蓋を明けた。そこには真白な綿の蒲団を敷いて、その上に青いエメラルドの宝石が一つ載っていた。

「これはッ――」

ジュリアの顔からサッと血の気がなくなった。彼女はバネ仕掛けのように立ち上ると、入口のところへ飛んでいって、扉に背を向けると、クルリと一郎を睨みつけた。

「あなたはあたしを……」

「ジュリアさん、誤解しちゃいけません。まあまあ落着いて、こっちへ来て下さい」