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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
あたしはハッとしたんですが、人気商売の悲しさにはぐずぐずしていると人に見つかって大変なことになると思ったので、引返そうとしましたが、その日四郎さんに見せて貰った日記のなかにあたしのことが沢山書いてあったものですから、これを残しておいてはいけないと思って、いま差上げただけの頁を破ってきたんですわ。すると間もなく皆さんに見つかってしまったんです。それがすべてですわ」
「ああ、そうですか」と一郎は大きく肯きながら「では耳飾の宝石も、そのときに落したんですね。これも拾われては蒼蠅いことになるから、後で探したというわけですね」
「仰有るとおりですわ。宝石のことは、楽屋へ入ってから気がついたんですの。随分探しましたわ。ほんとにあたし感謝しますわ。でもこのことは、誰にも云わないで下さいネ」
「ええ、大丈夫です。その代り、何か犯人らしいものを見なかったか、教えて下さい」
「犯人? 犯人らしいものは、誰もみなかったわ――」
といっているところへ、電話がかかってきた。それは出てきた支配人が、直ぐ西一郎に会おうという電話だったのである。
それから一郎は、支配人の室に行った。ジュリアの口添えがあったから、すべて好条件で話が纏った。