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きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

これでみると、一郎はやはり愛弟四郎を殺害した犯人を探しだそうとしているものらしい。

「ああ、一郎さん」とジュリアは苦しそうに顔をあげ「あたし何もかも申しますわ。そして貴方の弟さんの日記帳から破ってきた頁をおかえししますわ」

ジュリアは衣裳函のなかから、引き裂いた日記をとりだして、一郎に渡した。それは四郎が殺された日、大辻が始めに屍体の側で発見し、二度目に見たとき裂かれていた四郎の自筆の日記に相違なかった。一郎はそれを貪るように読み下した。

「それをよく読んで下されば分るでしょうが、四郎さんとあたしとは、千葉の海岸で知合ってから、お友達になったんです。それは只の仲よしというだけで、あたしは恋をしていたんじゃありませんのよ、どうかお間違いのないように、ね。――その日も四郎さんはあたしに会いに来たんですわ。それで夕方になり、四郎さんと日比谷を散歩して、あの五月躑躅の陰でお話をしていたんですが、待たせてあった、あたしの自動車の警笛が聞えたので、ちょっと待っててネ、すぐ帰ってくるわといって四郎さんを残したまま、日比谷の東門の方へ行ったんですの。そこで自動車を見つけたので、四郎さんも連れてゆくつもりで自動車で迎えにゆき、再び五月躑躅の陰へいってみると、四郎さんが殺されていたのですのよ。