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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
婦人たちのためには、セロファンで作った透明な袋があって、これを頭から被ってやれば、髪は湯に濡れずに済んだ。
二人はゴトゴトと音をさせながら、着物を脱いだ。
「お姉さま」と千鳥が隣室から呼んだ。
「なーに、千いちゃん」
「あたし、何だか怖いわ。だってあまり静かなんですもの」
「おかしな人ネ。静かでいい気持じゃないの」
そういってジュリアは奥に入ると、シャーッと白い噴泉を真白な裸身に浴びた。
「あの――お姉さま」と千鳥がトントンと間の板壁を叩いた。
「お姉さまが黙っていると、なんだか、独ぽっちでいるようで怖いのよ。あたし、お姉さまのところへ入っていってはいけないこと?」
「あらいやだ。まあ早くお洗いなさいよ。――そう、いいことがあるわ。じゃあ、あたしがここで歌を唄ってあげるわ。世話の焼ける人ネ」
そういってジュリアは千鳥のために、美しい口笛を吹きならしたのであった。その歌はいわずと知れた彼女の十八番の「赤い苺の実」の歌だった。
千鳥もそれに力を得たか、騒ぐのをやめてシャーッと噴泉の栓をひねって、しなやかに伸びた四肢を洗いはじめた。
それから何分のちのことだったかよく分らないが、この噴泉浴室の中から、突如として魂消るような若い女の悲鳴が聞えた。