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きょうりゅうていのぼうけん

恐竜艇の冒険

海野 十三

「少年読物」別冊、1948(昭和23)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,806 字 · 22 页

青空文庫

花火をあげる用意をしておけばよかったね」

「恐龍が花火をあげるものか」

結局のところ、恐龍号はグロリア号の針路前を横切ることになった。距離は半マイル。これならいやでも相手は気がつく。

ぼくたちは念入りに、海面から恐龍を出した。しきりに恐龍の頭をふり動かした。口もあいてみせた。

このきき目は大したものであった。巨船の甲板では乗組員や船客が、あわてて走りまわるのが潜望鏡を通して見えた。ライフボートは用意され、船客たちは大あわてで乗りこんだ。

「ふふふ、これが、こしらえ物の恐龍だと分からないのかなあ。船長まであわてているらしい」

「おやおや、針路をかえだしたぞ。逃げだすつもりと見える」

巨船は大きな腹を見せ、浪を白くひいて変針した。そのあわてた姿は、乗組員や船客のさわぎと共に、ぼくらの写真機におさめられた。巨船は、やがてお尻をこっちへ見せて、全速力で遠ざかっていった。

ぼくたちは、手を叩き、膝をうち、ころげまわって笑った。

恐龍号は、それからギネタの方へ引っ返した。しかし、日はまだ高いので、港へはいることはよくなかった。そこでぼくたちは相談して、ギネタの北東七マイルのところにある小さい無人島へ艇をつけ、夕方まで休むことにした。