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うらみなきさつじん
恨なき殺人
宮島 資夫
「新日本」1917(大正6)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,611 字 · 56 页
四
萩野と三田は、何時の間にかすぐ下の灌木の蔭にかくれていた。池田の顔をみると、
「何か文句でも言いましたかね」萩野が尋ねた。池田が、
「阿久津という若い男が、名刺を出して遊びに来てくれって言った丈けだった」と言うと、
「ああ、彼奴あ塩子の宿屋の息子ですよ。事務員になったから洋服を着たのが見せたかったんだろ」と言って三田が笑った。
「僕はもうどうでも好いと思っていたから、一寸あやまって来た。事務員より坑夫が好いよ」
池田はクサクサしたように言った。
四
池田は見張りに帰ると、鈴木に今日のことを話してから、
「所長は来たの」と訊ねた。
「今日はまだ来ないよ。昨日も来なかったのに」と変に笑ってから、
「来たからって坑内へ入るわけじゃなし、事務所で女の小言でも言ってる方が無事だんべ」と、わざと奥州訛りを出して言った。
その日も退けどきになると、池田は一番先きに山を下って、選鉱場の外から沼田を呼んだ。沼田は何時ものように包みを抱えて、ノシノシと出て来た。
「昨夜石山は何か言ってたかい」と池田はすぐに訊ねた。
「ううん、何とも言わねえ。奴さんまた碁を打とうってから、三番つづけて負かしてやった。