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うらみなきさつじん
恨なき殺人
宮島 資夫
「新日本」1917(大正6)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,611 字 · 56 页
然しそれでは、矢張り彼の心は落ちつかなかった。周囲がどんなに悪かろうと、自分さえドシドシ強く進んで行ったなら、こう言う心の苦しみは受けまいと思った。そして自分の卑怯と怠惰を責めるより外に途はなかった。
絣の着物をきて、帽子も被らずに、夕陽を背負って歩いて行く、やせぎすな松田の姿をみると、彼は妙に悲しくなった。
「気の毒だね」と、フト萩野に呟いた。
「全く気の毒でさ、俺なんか若い時から暴れて歩いて、随分切りも切られもしたけど、まだ牢屋の味は知らずに済んでるんだ。松田のようなおとなしい人間が、人を殺して懲役に行くなんて、全くはずみですよ。だけど松田が殺さなきゃ、三田が殺すか殺されるかしたんだ。どっちみち、一人は死んで、一人は行くことになってたんだ」
「全くそうだね、元はって言えば、あの阿久津が、何時かのことを根に持って、こんなことを仕出かしたんだよ、卑怯な奴だ」と、池田はまた宿屋の伜を憎んでみた。
「そう言や、俺があすこで喧嘩したのが種になったことにもなりますね」と、萩野は少し不服らしく言った。
「そりゃそうさ、一番最初は、行って見るって言った僕が悪いんだ。