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おんし
恩師
佐々木 邦
「現代」1926(大正15)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,714 字 · 14 页
僕はカラキシ運がないんですからな」
「又お株が始まりましたわね」
「それだから神戸だって当てになすっちゃ困りますよ」
「神戸の何て会社?」
「不二商事というんです。余り大きくないところの方が仕事を覚えるのには却って都合が好いんですよ。しかし二流会社では屈指だと言っていました。銓衡がナカ/\やかましいそうです」
と私は成否ともに多少箔をつけて置く必要を認めた。
「神戸でも宜いわ。何うせ母と一生一緒にはいられないんですから」
「お母さんを連れてお出になれば宜いじゃありませんか?」
「そんなことをしちゃ頭が上りませんわ」
「余り上げて貰いたくないんですよ」
「でも気が引けて我儘が出来ませんもの」
「我儘をする気?」
「オホヽヽヽヽ」
と清子さんは火鉢に炭をついで、
「あなた、お邪魔?」
と媚びるような一瞥を浴びせかけた。
「いゝえ、些っとも」
と私はもう水母のようになって、筆記が沢山溜まっていることを忘れてしまった。これだから成績が悪いのである。
会見に出掛ける朝、私はかねて用意の背広を一着に及んだ。
「似合いますよ」
と清子さんが褒めてくれた。
「押し出し丈けは及第でしょう」
「真実にしっかりおやんなさいましよ」