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おんし
恩師
佐々木 邦
「現代」1926(大正15)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,714 字 · 14 页
私が入学した頃の卒業生はビリコケでも羽が生えて飛んだ。多少成績が好いと引っ張り凧の形だった。首席で出た従兄の如きは口があり過ぎて選択に迷った。
「兎に角面会丈けはしてやらないと推薦者の感情を害するからね」
と言った調子で、頼むよりは断るのに骨を折ったものである。
然るにその翌年からソロ/\売れ口が悪くなった。続いて年々余るという噂を耳にしたが、此方の卒業までには未だ間があるから、川向うの火事ぐらいに考えていた。
「心配することはない。これから三年の中には持ち直す。統計からいっても不景気は然う長く続くものじゃない」
と本科になった頃も高を括っていたところが、然うは問屋で卸さなかった。不景気はその後年毎に悪化して、此年はそのドン底だという。昨今はもう他ごとでない。
「三菱が唯七人とはひどい」
と一人が溜息をつけば、
「それへ五十人も押しかけるんだから下積みは迚も見込がない」
ともう一人が弱音を吐く。卒業が来月に迫っても、私達は一向はずまない。落第の心配のある奴は兎に角、相応成績の好いものが浮かぬ顔をしている。
「去年の人が約半分残っているから、此年は十番以内でなければテンデ問題にしないそうだ。