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よろこばしきちしき

悦しき知識

深瀬 基寛

――停年講義(昭和三十三年九月十六日)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,972 字 · 33 页

青空文庫

これは私、非常に面白い言葉だと思うんです、――今のホワイトヘッドに劣らず面白い言葉だと思うんですが、あるむつかしい問題を解こうとしている訳です、科学者が。数学でも何でもいい。そこにはですね。自分がみずからに向って問うところの特別の、一定の問題というようなものはちょっともないと言うんです。いいですか、そこにはですね、自分が自分の注意を振り向けようとする特殊な対象物というものもないんです。ある問題を解こうとするのにその対象物というものはどこか、ないような感じですよ。そこにあるものは恰も霧、この手で掴もうと思うても掴みどころのない霧ですね、靄、霧を相手に格闘しているような、渾沌とした、目当てのない、intellectual disturbance ――知的混乱、――なんかこうもやもやしている。知的 intellectual disturbance があるのみである。自分の解こうとする問題がですね、ある解決の方向へかなりもう進んだ後でなければ、大体問題自身が何であるかも自分でわからんと言うんですね、分からない。これが非常に面白い。これはまさに詩人がですね、――私はこの前日本へ来たスティーヴン・スペンダーという詩人、このスティーヴン・スペンダー――だいたい Spender というのは「浪費者」