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あくむ

悪夢

豊島 与志雄

「改造」1923(大正12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,930 字 · 32 页

青空文庫

」

「ええ、いくわ。」

「じゃあ、一緒に死のうと云ったら?」

「死んだって構わないわ。」

「そんなら、君だけを僕が締め殺すと云ったら?」

「いやあよ、一人っきりじゃ!」

「とうとう本音を吐いたね。締め殺してやるからこっちにお出でよ。」

「いくもんですか。」

「屹度来ないね。」

「ええ。」

高慢ちきな鼻をつんと反らして、凹んだ眼で睥み返してくるのを、私はつと身を起して引捉え、膝の上に抱き上げてやった。力を籠めて掴んだら折れそうな、肉のつかない細い腕だった。ただ乳房だけが着物の上からも、むっちりと膨らんで感ぜられた。そして私は、ふふんと云った顔付で身体を任してるこの小さな娘を、どうしてくれようかと残忍な方法を考え廻した。それは虐げられた者に対する腹癒せであり、また自分自身に対する腹癒せであった。

それから私は、帰ると云ってた言葉も忘れて、夜明け近くまでうとうとと眠った。

眼を覚すと、五燭の電燈が変に赤くぼんやりとしていて、遠い汽笛の音や何かの響が、夜明け近い気配を齎らしてきた。私は上半身を起して、傍に寝乱れている小娘の顔を見守った。取返しのつかない気恥しいことをしてしまった、というような忌々しさが湧き上ってきた。