轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あくりょう
悪霊
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1933(昭和8)年11月~1934(昭和9)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,980 字 · 67 页
引きながらやって来る。カラーは古風な折目のない固いのを使用しているが、そのカラーの上に一団の毛髪の塊りが乗っかっている様に見える。熊浦氏はそれ程毛深いのだ。頭は三寸程も伸びた毛をモジャモジャと縮らせ、ピンとはねた口髭、三角型に刈込んだ顎髯、それがずっと目の下まで密生して、顔の肌を埋め尽している。その毛塊の真中に鼈甲縁の近眼鏡がある。それが園田学士以上に強度のものだ。
熊浦氏は会合に出ると、光線が怖いという様に、いつも電燈から最も遠い椅子を選ぶ癖がある。今日もその為に態と残してあった隅っこの椅子に一人離れて腰かけて、暫く黙って一同の会話を聞いていたが、突然太い嗄声で喋り出した。
「どうも、今度の、犯罪は、この心霊研究会に、深い因縁があり相だわい。臭い。わしにはその匂が、プンと来る様な気がする。霊魂不滅を、信仰して、あの世の魂と、遊んでいると、生命なんて、三文の、値打もなくなるんだ。ウフフフフフ……、どうだい、槌野君、そうじゃ、ないか」
熊浦氏は、ゆっくりゆっくり地の底からでも響いて来る様なザラザラした声で云うのだ。彼の積りではこれが一種の諧謔らしいのだが、迚も常談などとは思えない重々しい喋り方だ。