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あくりょう
悪霊
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1933(昭和8)年11月~1934(昭和9)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,980 字 · 67 页
第二信
なぜ一応はそれを疑って見なかったのであろう。
第二信
早速返事をくれて有難う。君の提出した疑問には、今日の手紙の適当な箇所でお答えする積りだ。この手紙は前便とは少し書き方を変えて、小説家の手法を真似て、ある一夜の出来事を、そのまま君の前に再現して見ようと思う。そういう手法を採る理由は、その夜の登場人物が色々な意味で君に興味があると思うし、そこで取交わされた会話は、殆ど全く姉崎未亡人殺害事件に終始し、随って君に報告すべきあらゆる材料が、それらの会話の内に含まれていたので、その一夜の会合の写実によって、僕の説明的な報告を省くことが出来るからだ。それともう一つは、説明的文章では伝えることの出来ない、諸人物の表情や言葉のあやを、そのまま再現して、君の判断の材料に供し度い意味もあるのだ。
九月二十五日に姉崎曽恵子さんの仮葬儀が行われたが、その翌々日二十七日の夜、黒川博士邸に心霊学会の例会が開かれた。この例会は別に申合せをした訳ではなかったけれど、期せずして姉崎夫人追悼の集まりの様になってしまった。
僕は幹事という名で色々雑用を仰せつかっているものだから、(二十三日に姉崎家を訪ねたのもその役目柄であった)定刻の午後六時よりは三十分程早く中野の博士邸を訪れた。