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あくりょう
悪霊
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1933(昭和8)年11月~1934(昭和9)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,980 字 · 67 页
「ウン、そうだ。わしも、槌野説に、賛成だね。現に、我々の『織江さん』は、姉崎未亡人の、惨死を、ちゃんと、云い当てて、いるじゃないか。あれは、嘘を、云わなかった。だから、今度の、予言も、嘘でないと、考えるのが、至当だ」
熊浦氏は、人一人の命にかかわる事を、不遠慮に断言する。
「併し、少くとも、我々の中に犯人がいるという点丈けは、どうも合点が出来ませんよ。第一、我々会員には、姉崎さんを殺す様な動機が皆無じゃありませんか。姉崎さんが生前例会に顔出しをしていたということ丈けで、あの殺人事件と、この会とを結びつけて考えるのは、少し変だと思いますね」
僕が云うと、熊浦氏は皮肉な笑声を立てて、ギラギラ光る眼鏡で僕を睨みつけながら、
「動機がないって? そんな、ことが、分るもんか。なる程、あの人は、表面上は、ただの、会員に、過ぎなかった。だが、物の裏を、考えて、見なくちゃ、いかんよ。裏の方では、会員の内の、誰かと、あの未亡人と、どんな深い、かかり合いが、あったかも知れん。あの人は、若くて、美しい、未亡人だったからね」
と意味ありげに云った。
誰も反対説を唱えるものはなかった。