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あくりょう

悪霊

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1933(昭和8)年11月~1934(昭和9)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,980 字 · 67 页

青空文庫

「訳のない、ことです。アリバイを、証明すれば、いいのだ。あの、殺人事件の、起った時間に、諸君がどこに、いたかということを、ハッキリ、させれば、いいのです」

「それはうまい思いつきですね。じゃ、ここで順番にアリバイを申立てようじゃありませんか」

僕は早速、熊浦氏の提案に賛成して、先ず僕自身のアリバイを説明した。それに続いて、槌野君、園田氏、熊浦氏の順序で、九月二十三日の午後零時半から四時半頃までの行動を打開け合った。

先ず、僕自身は、先便にも書いた通り、姉崎家を訪問するまでは、午後からずっと、勤先の新聞社にいたのだし、槌野君は、朝から、二階借りをしている部屋に座りつづけて、一度も外出しなかったと云うし、園田文学士は大学の心理学実験室で、ある実験に没頭していたと云うし、熊浦氏もあの日は昼間一度も外出しなかった、それは婆やがよく知っている筈だとのことで、一応は皆アリバイが成立した。その席に証人がいた訳ではないのだから、疑えばどの様にも疑えたけれど、兎も角も一同の気やすめにはなった。

「だが、ちょっと待って下さい」

僕はふと、あることを気づいて、びっくりして云った。