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かなしいごかい
悲しい誤解
豊島 与志雄
「女性改造」1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,139 字 · 23 页
然し誰の意見も、新聞記事の埓外には出ず、つまらぬ臆測をこね廻してるに過ぎなかった。そして不思議なことには、原子爆弾を怖れながらも、戦争を望むかのような気分が漂っていたのである。日本は戦争の当事者ではないから、もう原子爆弾は落されない、という想定のもとに、戦争は起るかも知れないと冷淡に忖度してるのである。平和はどこへ行ったのであろうか。
「それでも、戦争はどうなんだい。」と笠原は言う。
「戦争だって、僕には何の関係もないさ。」
私の憂欝は皮肉になり、私はもうそれきり口を利かず、自分のデスクに戻った。
横手の席が空いていた。堀田の席だ。専務に呼ばれたきり、長く戻って来なかった。おかしな男である。事務が粗漏でそして怠慢、というのが彼に対する重役連中の一致した意見だ。しばしば叱責されたが、いつも彼は平然としていた。朝の出社に遅れることはあっても、夕方の帰りを急ぐことはなかった。口数が少く、ものぐさで、ひとを喰ったようなところがある。
その堀田が、ふだんから蒼白い顔を、なおすこし蒼ざめさして、席に戻って来た。卓上に肱をつき、へんな苦笑を浮かべて、煙草を吹かした。